●●ストリートダンスと腰痛●●
急に起こるギックリ腰(急性腰痛)から慢性の腰痛、また長引く腰痛からなってしまうこともある坐骨神経痛など、腰の痛みや障害には様々なものがあります。
今回はストリートダンスにおける腰痛がなぜ起きるのか?と言う点と、いかに防ぐのかについてお話したいと思います。
まず、ストリートダンスにおける腰の使い方からお話ししましょう。
ヒップホップ、ブレイキン、ポッピン、ロッキン、ハウスなどなど、ストリートダンスと言ってもジャンルは様々ありますが、腰の使い方においては必ずと言っていい共通した使い方があります。
それが『アイソレ』と『リズム取り』です。
これらの動作にどの様な問題点があるのか、写真や図を使いながら説明してまいります。
まずは左の写真(1)をご覧下さい。
腕を組んでもらっているのは、腰や背中の反り具合が見えるためです。
この形は、胸のアイソレで胸を出した時や、ダウンやアップのリズム取りでアップした時の腰・背中の使い方です。
おへその高さ位のところを中心に、腰と背中が後ろに反っていますね。
同様にアイソレで胸をへこませた時、リズム取りでダウンした時の形が写真(2)になります。
これもまたおへそ位の高さを中心に、腰と背中が前に曲がっています。
これらの動作をアイソレやリズム取りの練習で長時間続けたり、またブレイキンなどでもハローバックなどのフリーズや、フットワークからのコンビネーションなどで空中で腰を反ったりする場合も、同じような腰の反り方になっていると思います。
この腰の反らせ方は医学的(運動学、解剖学、生理学など)から見て、部分的な動きで背骨への負担も大きいものになります。
自然で効率のよい動きとは、全身がまんべんなく同時に動くことで、部分的な負担を分散できるようなものです。
たとえば、四本足の動物でも同じ様な腰の反り方はしますが、四本足を地面についているので腰への負担が少なく、頭から足先まで同時に動く(連動)ため、一ヵ所に強い負担がかかることがない、全身の協調運動になっています。
人間は“立っていること”だけで相当不利な状態であるにもかかわらず、一部分だけを連続して動かすような使い方は、かなりリスクがあるものになるのです。
細かな理由はいろいろありますが、ではどうすれば体を痛めずに練習ができるかということですが、ストレッチ(ウォームアップ時・クールダウン時)や、ダンスに合った筋トレなどは当然大切です。
ここでは、それ以前の根本的な背骨の動かし方についてご説明します。
まず、ストリートダンスによくある腰の反り方は上の図(3)のようになります。
右側の腰を反った方の図で分かるように、背中と腰は後ろに動くので、水平線を入れた部分で腰の背骨(腰椎)が前方に強く曲がり、背骨の関節や筋肉に強い負担がかかります。
しかし、これはストリートダンスの基本技術そのものなので、仕方がありません。
そこで、練習の前後などで腰、背骨全体の自然な曲がり方をして、部分的な疲労を取り、背骨全体を使って楽に動けることを体に思い出させてやるのです。
上の図(4)は、骨盤から上の背骨全体が後ろに反っています。
こうすると、首から腰までの全ての背骨が少しずつ後ろに曲がっているので、一ヵ所に強烈な負担がかかることがありません。
通常は腰を反ると言えばこの(4)形になるのですが、ストリートダンスをやっていると、図(3)の負担の大きい反り方しかできない様になっていることが多いです。
これは体が硬いからできないのではなくて、その腰の反り方を忘れてしまった・気付かなかったというだけなのです。
現にその場でアドバイスすると、すぐにできてしまいます(もともと運動能力の高いストリートダンサーですからね)。
この様な動きを腹這いに寝てから床に両手をついて、ゆっくりと行ったりすると良いのですが、ダンスでもスポーツでも人間の動きの基本は『立つ』ことから始まります。
そのため、できれば立った状態で行って頂きたいのですが、慣れないと腰を痛めてしまうので、写真(5)のように、壁などに両手をついてから行うと良いでしょう。
ゆっくりと気持ちよい程度のところから始めてください。少しずつ慣れてきたら壁を使わずに行います。
これにより、背骨や首が自然なS字の反りを失い、動きが悪くなったストレートネックやストレートバックの改善と予防にもなります。
実際に、背骨の自然なS字湾曲が戻り、腰や胸のアイソレがよくなると、首のアイソレが苦手だったダンサーが、途端にやりやすくなる現象をよくみかけます。
以上のことを当ホームページで動画でもご紹介しております、
と合わせて行って頂くと、骨盤から股関節、そして背骨が整って腰痛が起こりにくくなり、またパフォーマンスも向上します。