●バレエの足使いと運動学(2)

 

さて、前回の続きですね。

バレエやジャズダンサーの方々からの
よく聞くお悩み、

 


●太ももの前側ばっかりがすぐに張ってしまう

 

●ふくらはぎが張りやすく、肉離れをしやすい

 

●足先が内側に入ってしまう“かま足”

 


などについてのお話です。

 

私はこれらに対して、骨盤の調整と共に、
足首と膝の両方を整えることが重要だと感じています。

 


そして、バレエに限らず、バランスよく立つためには、


“脚全体の内側ラインが使える”


と言うことが条件となります。

 

バレエの基本姿勢、アンドゥウォールは、
脚全体を外に開く操作であるため、
必然的に脚全体の外側に重心が乗りやすい形です。

 

その様な状態ですから、内股から爪先までのラインに
しっかりと重心線が乗っていなければ、
グラグラしてしまい、動くのは難しいです。


通常の場合、脚の内側ラインに重心線を通す感覚が
しっかりと身に付かない内に、
始めからアンドゥウォールを学ぶので、


外に重心の乗りやすい姿勢になりながら、
内股ラインに重心線を乗せる!


と言う難しい学び方をしてしまっているのではないか?
と私は考えています。

 

ですから、天才タイプで勘のいい人は、
さっさと上級クラスに行ってしまったりしますが、
普通は、この最初の基本から大変なわけです。

 

学ぶ途中で、肉離れや捻挫を
繰り返す可能性も高まります。


この様なことはバレエ以外でもあることで、
例えば武道などもそうです。

 


難しい型の動きをスムースに行うには、
型とは関係ない動きの練習が役立ったりすることがよくあります。

 

型と関係ないとは言え、医学的、運動学的に見れば
それは理にかなっているものだと言うことなんですね。

 

私の経験上、その流派にある基本動作や型ではなく、
その先生が独自でやっていた

 

“ちょっとした体操??”

 

みたいなのが、とても有効であることに注目していました。

 

後になり考えてみますと、それらはやはり、
運動学的に理にかなっているものなんですよね~。

 

 

この様に、伝統的な芸能であるバレエ、
伝統的な身体操作を伝える武道、
両方に同じ様な盲点があると私は考えています。

 

伝統文化であるがゆえ、
しっかりした稽古体系があるのも確かですが、
不足している部分がある可能性もあるのではないでしょうか。

 


その証拠に、昔はやっていなかったであろう、
医学的な知識を学ぶことも、世界レベルのバレエ学校には
きちんと授業として組み込まれているのですから。


これから先も、基本はそのままに、
それでいて、よいものは付加していくのが
伝統の本当の意味かな、なんて思ったりします。

 

 

さて、それではアンドゥウォールのための、
内股にしっかり重心を乗せられる様になる、
シンプルなトレーニング法をご紹介します。


上の図は、人の下半身の図です。

内股で膝を曲げる、スキーのボーゲンの様な姿勢です。

 


1、上の図の様に、足は肩幅より少し広めに取り、両膝を寄せて曲げます。


この時、上から見て、爪先より前に膝が出ていて結構です。
そして、脚先は平行か、やや内側を向く程度にし、
小指側が床から離れる様な形をキープして下さい。

 

2、この状態でゆっくりと10~20回位、膝の屈伸をするだけです。
ポイントは、足裏の拇指丘と両膝にしっかりと重心を乗せることです。

 

3、別の方法で、この形をキープしたまま、
前に10歩、後ろに10歩と歩いてみるのもいいです。

 


他ジャンルのダンサーでは、
内股にすると親指が痛い、と言っていたポッパーに
これをアドバイスして、内側ライン重心がしっかり乗って、
踏ん張りが強くなった、と言うこともありました。

 

要するに、内股にきちんと重心を乗せる感覚が無かったので、
それを体に覚えさせたら、その使う部分の筋肉が働き始めた、
と言うことなのでしょうね。

 

 

 

余談ですが、これは伝統空手の型である

 

“三戦”(さんちん)

 

や、

 

“ナイハンチ”

 

からアイデアを頂きました。

 

私はこの原理を治療に応用し、
足首から膝のゆがみを同時に調整しています。

 

これをやるだけでも、骨盤や股関節のゆがみが
かなり取れてしまっていたりするので、
やはり人間の体はつながっているんだなあ~と感じます。


前回の骨盤の調整とこの内股ラインができると、
横から体を見た時に、かなり薄く見えます。

お腹と背中の筋肉のバランスが整うからなんですね。

 

 

これは優れたバレエダンサーの姿勢が、
皆、似た様な感じに見えることにもつながります。


例として、

 


・首が長く見える

 

・肩甲骨が下がっている(腕が長く見える)

 

・胸やウェスト、下腹部が、横から見ると薄く見える

 


などです。

 

これらは解剖学、運動学的にバランスのよい、
動きやすいアライメントであること意味します。

 


人間である以上、基本的には皆同じ構造です。

 

人種が違うからとあきらめてしまう部分もありますが、
日本人でも欧米人でも、優れたバレエダンサーが、
結果的に似た様な姿勢になっているのは、
そうした理由にもよるものなのです。

 

できる人の姿勢や立ち振る舞いなど、
医学的に理にかなったものであることが多いものです。

 

人体とは本当に面白いものですね。