第1回目は、私の治療の基本的な柱

となるべきものをご紹介させて頂いた。

 

今回はその中の、

 

3、東洋医学(内科的アプローチ)

 

について。

 

治療するに当たり、アプローチする方法の選択も大事だが、

治療のドーゼにもっとも注意したい。

 

手技でも鍼灸でも、刺激が強すぎると

かえって悪化させることがある。

 

反対に、刺激が不足していれば充分にほぐすことができず、

無駄に時間をかけてしまうことになりかねない。

 

ここで一つ申し上げておきたいのが、

私の考え方として、

 

“軽い刺激だけで治す”

 

や、

 

“強い刺激のみを使う”

 

の様なことはしていない。

 

 

軽い力を加えただけで治ってしまうことも当然ある。

しかし、すぐに戻ってしまうと言うこともある。

 

慢性のコリなどはそれなりに硬くなっているので、

ある程度の力を加えて、しっかりほぐさないと

すぐに戻ってしまう。

 

また、体力のない人や、過労の状態の時に、

強い力を加えれば、体を痛めることになり、

結果、気分が悪くなったり、かえって症状が悪化したりする。

 

それらのことを考えると、

 

“治る”

 

と言う現象は、時間の経過を追ってよく観察し、

その上でよくなっているのか、変わっていないのか、

を判断しなければならない。

 

 

 

東洋医学的な診断法は、患者の状態により、

どれくらいの刺激量が適しているか、

を判断するのに有効な診断方法である。

 

皮膚や筋肉の張り具合をみるのはもちろん、

その日、その時の体調をみるのが大切。

 

特に、寝不足や過労の場合や、

老人や小児などは常に確認しておきたい。

 

顏色やくちびるなどの血色でも分かるが、

より詳細に判断できるのが

 

“脈診”

 

なのだ。

 

 

血圧、体温、脈拍などのバイタルサインンを診ることであり、

内科的なアプローチと言えるだろう。

 

 

ただ、残念なことに、伝統的な鍼灸治療、

または漢方医学における脈診の位置は、

多くの治療家にとって、まだ受け入れられているとは言えない。

 

なぜなら、人の手によって行われるものだから、

その

 

“誤差”

 

があるため、人によってはまったく違う見解にもなってしまい、

信用するに値しない、と思っている鍼灸師もいるようだ。

 

 

だが、それはとてももったいないことだと思う。

 

基本的な脈診を学べば、その様な

 

“見解のバラつき”

 

はほぼ無いと言っていい。

 

なぜなら、現代医学でも行われている脈診が、

東洋医学の基本的な脈診とも一致する部分が多いからだ。

 

現代医学が使用しているものを、

鍼灸師たる者、やらない手はない。

 

 

 

鍼灸師なら常識として知っていることだが、

脈診には

 

1、六部定位脈診

 

2、脈状診

 

の2種類がある。

 

1、の六部定位脈診は、患者の左右の手首を、

術者の左右の第2指~第4指で触れ、

6ヶ所の脈の状態の違いを把握するもの。

 

これは指の当て方、力加減など、術者のセンスによるところが大きく、

よい師に指導を受けても、なかなか再現するのが難しい。

 

ここが脈診は非科学的だ、バラつきが多く信頼できない、

と言われるゆえんである。

 

これに比べ、先に挙げた現代医学とほぼ同じと言う脈診とは、

2、の脈状診である。

 

 

これは字のごとく、脈の状態を見るもので、

六部定位脈診の様に、それぞれの部分の違いを比較するものではない。

 

“浮沈遲数虚実”

 

の6種類を判断するだけのもの。

 

 

浮いているのか(軽く触れて分かる様な)

沈んでいるのか(指を強く握らないと分からないのか)

 

脈拍が遅いのか

脈拍が早いのか(数は速いの意)

 

虚しているのか(指への脈拍の当たりが弱いのか)

実しているのか(脈拍の当たりが強いのか)

 

 

乱暴な言い方になるが、これらの鑑別は慣れてしまえば、

医療を学んでいない一般人でも分かるものと思う。

 

例えば現代医学では、

 

甲状腺機能亢進症は

“頻脈”

になり、

 

甲状腺機能低下症では、

“徐脈”

になるとある。

 

東洋医学の脈診で言いかえれば、

 

頻脈は数脈であり、

徐脈は遅脈である。

 

この程度の知識なら医師ならずとも、

鍼灸師や柔道整復師の国家資格者であれば、

専門学校にいる間に必ず勉強するものである。

 

科学的と言われる現代科学が一分認めたと言える部分だけでも、

この脈診を使わない手はない。

 

 

私もそんなに高度なことをやっているわけではなく、

基本的なこの脈状診だけはしっかりみていこうと思っている。

 

 

6種類の脈を診る訓練をしていく内に、

6部位のそれぞれの違いも分かってくるかもしれない。

 

胸や上背部の痛みを訴えて、手首に近い寸口の部位の脈が

 

“沈、実、数”

 

などであれば、心臓や肺の疾患、大動脈瘤など、

放置すると重症化するおそれのあるもの、

早急に対応しなければならないもの、

などの可能性を考えなくてはならない。

 

そんな場合はいち早く、検査のできる医療機関を受診すること

を優先させなければならない。

 

上記した様に、当日の体調から、

危険度の高い内科系疾患の鑑別にまで有効な脈診。

 

コメディカル分野の者や、私たち手技療法家であれば

ぜひ、身につけておきたいものと考えている。